IP等級とIP定格コネクターの基本
スマートフォンに間違えて液体をこぼしたり、水の中に落としてしまった人の話を誰もが聞いたことがあるかと思います。調査によると、20%のスマートフォンはこうした災難に遭っているとされており、そのため一部のモデルは短時間の軽い浸水に対する耐性を備えて設計されるようになりました。
新しいタイプの携帯用電子機器およびウェアラブル電子機器に対する需要は高まっており、屋外環境センサや産業用プロセスモニタなどのIoT機器とともに、これらの機器の多くは予想外の、あるいは避けられない液体との接触に対する保護を必要とします。このようなリスクには、雨水への曝露や水滴の飛沫、または不確定期間の完全な浸水なども含まれます。また粉塵や粒子の侵入は、正常な動作を妨げたり、信頼性を損なう可能性もあります。
これらの危険に対する効果的な保護は、設計の初期段階でデザイン・インする必要があります。エンクロージャの継ぎ目や接続部分、そしてケーブルや追加デバイスを付属する露出した接続点ならばどれも水分や粒子の入り口となるポイントになります。エンクロージャとコネクタを選ぶ場合は、設計者は表示されているIP等級を参照することで、提供される保護範囲を評価することができます。
IP等級とは何ですか?
IP等級コードは国際的に認定されており、IEC 60529で規定された標準スケールと米国ではANSI 60529、ヨーロッパではEN 60529のような国内や地域の同等の標準スケールに準ずるものです。このコードは、IPの字に2桁の数字が続きます。最初の数字は、粉塵やその他の微粒子のような固形物体の侵入に対する耐性を表し、2番目の数字は液体に対する保護を表します。
IP67 = 固形物体の等級(最初の数字)
IP67 = 液体の等級(2番目の数字)
IP等級分類の基本的な内訳
IP等級の番号は、どのように定義されていますか?
次の表には、それぞれの番号が意味する侵入に対する保護の範囲が記載されています。例えばIP67定格なら、この部品が防塵仕様で、水面下1mの深さで30分まで耐えられることを意味します。
保護レベル | 固形物体の等級(最初の数字) | 液体の等級(2番目の数字) |
---|---|---|
0またはX | 接触または侵入に対する保護がない(または等級が与えられていない)。 | このタイプの侵入に対する保護がない(または等級が与えられていない)。 |
1 | 50 mm以上の固体物質(例えば、体の大きな表面との積極など。ただし、意図的な身体接触は除く)に対する保護。 | 垂直に落ちてくる水滴に対する保護。本体が真っ直ぐな場合は有害な影響を受けない。 |
2 | 12 mm以上の固体物質に対する保護(間違って指で触ってしまうなど) | 垂直に落ちてくる水滴に対する保護。正常位置から15°以内で傾けた場合に有害な影響を受けない。 |
3 | 2.5mm以上の固体物質(ツールなど)に対する保護 | 垂直より60°以内からの降雨に対する保護。 |
4 | 1mm以上の固体物体(釘やネジ、虫などの小さな物体)に対する保護。 | 全方向からの水の飛沫に対する保護。10分以上の振動放水でテストした場合に有害な影響を受けない(限定された侵入は許可)。 |
5 | 粉塵保護:粉塵やその他の粒子に対する保護(内部コンポーネントの正常な動作に影響しない程度の侵入に対する保護。) | 低圧の噴流に対する保護。全方向からの6.3mmノズルからの水の噴流を行った際に有害な影響を受けない。 |
6 | 防塵:粉塵やその他粒子に対する完全な保護。 | 強力な水の噴流に対する保護。全方向からの12.5mmノズルからの水の噴流を行った際に有害な影響を受けない。 |
7 | 該当なし | 最大10mの深さで、最長30分までの完全浸水に対する保護。有害な影響がない程度の侵入は許可。 |
8 | 該当なし | 1m以上の浸水に対する保護。装置は水中への連続的な浸水に適している。条件は、製造者が定めることができます。 |
IP定格コネクタの選択
機器内に水や粒子が侵入する可能性がある露出した外部コネクタなどのコンポーネントを選択する際は、そのアプリケーションが意図する使用法に基づいた最低限必要な保護を提供するIP等級を備えた部品を選択する必要があります。
一部のアプリケーションでは、コネクタとプラグが接合されたときに密封されるような組み合わせを求められる場合があります。これらは、埃や水分の侵入により信号が乱れたり、接点が腐食したり、トランスミッターや電源などの部品が損傷する可能性がある環境で、コントローラやモジュールを繋げるために使用される工業用ケーブル間の接続によく必要とされます。この完全密封型のケーブル接続は、高圧水にさらされたり(例えば、付近の機器が高圧洗浄機で清掃された場合など)、完全に浸水した場合でも、水の浸入に耐えることができます。
一方、デバイスにマイクロUSBポート、ヘッドフォンソケット、DC電源入力などの外部ポートがある場合、外部ケーブルや機器が接続されていない場合に内部回路を保護するためにIP定格コネクタが必要になることがあります。十分に高いIP等級であれば、設計者はデバイスのエンクロージャを完全に密閉し、汚れや湿気から保護することができます。このような使用法は、嵌合時に恒久的な防水を必要とするケースよりもより一般的となっており、急成長する携帯型機器のマーケット需要のお陰でかなり急速に拡大しています。
コネクタ単体でIP定格されている場合、たとえプラグがIP定格であったとしても、プラグ挿入時に防水性を保つようには設計されていないことに注意してください。上の図に示すネジ端子インターフェイスと同様に、プラグとレセプタクルの間の接合部に必要な異物侵入保護を提供するには、追加のロックおよびシールのメカニズムが必要です。
Same SkyのIP定格コネクター
Same Skyは、様々なUSB規格に準拠したUSB Micro BとType Cレセプタクル、直角3.5mmオーディオ・ジャック、1.3mm、2.0mm、および2.5mmサイズの3.5Aおよび5Aの直流電源ジャックDC電源ジャックなど、IP67またはIP68定格コネクターの製品ラインナップを取り揃えています。全製品がIP67またはIP68定格で、非接続状態でデバイスが埃や高圧水から保護されています。シールには通常、効果的なシーリングを提供するように設置されたカスタム形状のガスケットまたはOリングなどのゴム部品を使用しています。下図は、Same SkyのDC電源ジャックとUSBレセプタクル上にあるOリング取り付け金具を示しています。
拡大する携帯型機器の使用により、さらに堅牢な製品やコンポーネントが必要になってきています。Same SkyのIP定格USBレセプタクル・コネクターとオーディオ・ジャック、DC電源ジャックは、埃や水分からの追加的な保護を提供します。これを使うことで設計者は、外部侵入物からの継続的な密封が必須なアプリケーションに対してさらに柔軟に対応することができるようになります。